本当に、随分と長い話に、お前を付き合わせてしまった。

これを読んでくれたお前は、私が、私達の偉大な先祖を一度は恨み掛けたように、私を恨んでいるかも知れない。

私の半生そのものは兎も角、私が信じたことも、抱いた想いも考えも、願いや望みや誓いの為に成したことも、単なる私の我が儘と思ったかも知れない。

私は、自身の人生や運命に惑わされて血迷った、かつての勇者の成れの果てにしか見えないかも知れない。

……私自身、そうなのかもな、と思う刹那はある。

私は、どうしようもなく愚かで、正気も失っていて、全てから目を背けてしまった勇者の成れの果てなのかも知れない。

だが、だとしても、私は私が知り得た全てと、私自身で掴んだ『答え』の全てを、この刹那も信じているし、死して後も信じ続ける。

それも又、私の勝手であり我が儘でしかないことなのだろう、とは思うし。信じられなくて当然のことだと………………────

────…………そう。そうだな。

お前は、何も信じずともいい。

何一つも信じないでくれ。

ロトの血を引く勇者は、只の愚か者でしかなかったのだと笑い飛ばしてくれ。

アレクや私が歴史の裏側に隠してしまったことなど気付く必要も無い、勇者と言う存在の運命や意味を知ろうとする必要も無い、そんな生涯を送ってくれ。

この手記を手にする『お前』など、未来永劫、この世の何処にも存在しないでくれ。

それこそが、アレクや私の望みだから。

……だが、もしも。

アレクと私が繋いだロトの血と共に、勇者の運命をも背負ってしまうかも知れない私達の大切な子孫のお前が、この世に生まれてしまうやも、と。

『これ』を求めるお前が、何時かの日には現れるかも知れない、と。

そう思って私が綴ったこれに触れた『お前』がいるなら。

お前が、今、この手記を手にしているなら。

……どうか、これだけは信じて欲しい。

アレクが、私を想い、恐らくは今も尚、想ってくれているだろうように、私も、お前を想っている。

少なくとも私の何代かは先だろうお前を想い、お前を想いつつ祈っている。

お前の全てが幸せであるように。

そして、この世界から、勇者の運命──私達が神の呪いと断じたそれが、消え去ってくれるように。

どれ程に願っても、祈っても、この肌の下を流れる血も、背負った運命もアレクに等しかった私が、こうして彼と同じ『答え』に辿り着き、彼と同じ場所に立ったように、お前も何時の日にかは、彼や私が掴んだそれと同じ答えに辿り着き、同じ場所に立ってしまうかも知れない。

たった一人きりで、否応無く断崖絶壁に立たされてしまったような孤独と絶望に苛まされながら、神のみの領域に触れてしまったが故の、血も凍える程の恐怖に怯えているかも知れない。

……だとしたら。

そんな心地で、今、お前がこの手記を読んでいるのだとしたら。

どうか、思い出して欲しい。

私達の偉大な先祖が紡いだロト伝説を。

私が遺した竜王討伐物語を。

各々が紡いだ伝説の果てに、アレクと私が辿り着いた答えは、今のお前が抱えているだろう『答え』と等しいと。

…………お前は、一人ではないよ。

アレクが、自身の手記に書き残してくれた、「君には俺がいる」との言葉おもい同様、お前には、アレクと私がいるから。

どんな真似をしても。どんな手を使っても。例え、この世界の風の中に、想いのみの存在と化して溶けてでも。

私達は、私達と同じ血を持ち、同じ運命を背負い、同じ路をも往こうとしているかも知れないお前の傍らに添い続け、見守り続けてみせるから。

お前は、一人では無く、孤独でも無いから。

お前自身が正しいと信じる路を、信念と共に、胸を張って辿りなさい。

決して、後悔だけはしないように、お前の心の命ずるままに。

────最後に。

アレクと私の、大切な大切な子孫のお前。

私自身の『想いの丈』であり、且つ、遺言とも言えるような年寄りの長話に、終いまで付き合ってくれて感謝する。

有り難う。

今は未だこの世にはいない処か、永劫この世には現れぬかも知れぬお前相手に、遺言とも取れるものを認めて遺すと言うのは、少し間の抜けた話な気もするが、私は、そういうつもりもあって、この手記を綴った。

恐らくだが……、もう、私に残された時間は僅かだから、『生きた私』がこの世に遺す、最後の想いとして、これを。

────有り難う。

本当に本当に、有り難う。

アレクと私の、大切な大切な子孫のお前。

…………では、これで。

もう……、さようなら、だ。

アレフ・ハラヌ  

End

後書きに代えて

『ROTO(当サイトのDQ@ロトシリーズの二次小説本編)』の中に登場した、「ロトの血を引く勇者@DQ1主人公:名前はアレフさん」の回顧録(のようなもの)と当人の話でした。

アレクとは違って、これは、回顧録のようなもの、と言うよりは、アレフの遺言、と言った方がより正しいかも知れない。

──アレク同様、うちのロトの末裔三人組の曾おじいちゃんも、結構いい性格してます。如何せん、当サイトのアレフは、孤児でした、と言う設定だし。

アレクよりは真面目な性格してるけども、アレクよりも擦れた性格してる。

でも、家族愛とか一族愛は、アレフが一番強いかも知れない。アレクよりも、アレンよりも。

尚、この作品は、『ROTO』をお読み下さった方に拝読して頂くことを前提としているので、以下は、そのつもりで書かせて頂きます。

──アレフの『敗因』は、愛が過ぎたことかも。

んで以て、彼は、先祖と同じ路をなぞり過ぎた。

……何処までもひたすら、恐らくは、って奴ですが、その辺りかな。

──それでは皆様、宜しければご感想など、お待ちしております。